東京高等裁判所 昭和54年(行ケ)119号 判決
本件審決に、これを取消すべき違法の点があるかどうかについて考える。
原告は、審決が本件考案の場合にピストンロツドの伸縮方向と回転軸の回動方向とは作用効果上格別の差異はないとしたことを非難し、本件考案は、車輪巾の広いロードローラー等の積載のとき、ピストンロツドと腕部とがまつたく邪魔にならず積載することを可能とすることを目的としたものであり、このような着想は引用例にはまつたくなく、引用例の構成のものでは、ブルドーザは積載し得てもロードローラーは積載し得ず、本件考案は引用例のものに比し、作用効果上格別なものを備えているから、本件考案と引用例の審決認定の相違点を単純な設計変更の域にとどまるものとすることはできず、本件考案を引用例と同一とすることはできない旨を主張する。
しかしながら、引用例(成立について争いのない甲第三号証)には、本件考案の回転軸に相当する操作軸35は、荷台Pの後部の傾斜部26よりも下にあつて、荷台Pに固定された支持用の腕金36によつて支持されており、右操作軸35には、本件考案の腕部に相当するコントロールレバー37の下部先端が固定され(引用例第四欄第一四行ないし第二八行―訳文第一二頁第一行ないし第一五行)、コントロールレバー37は、ウインチ39及びケーブル38又は水圧シリンダー50及び杆52(本件考案のピストンロツドに相当する)によつて回動せしめられる(同第四欄第三五行ないし第四二行―訳文第一三頁第一行ないし第一一行、第六欄第一三行ないし第二一行―訳文第一九頁第一四行ないし第二〇頁第二行)ことが記載されているから、コントロールレバー37及びケーブル38又は杆52は、本件考案の歩み板に相当するトラツクユニツト20が降下したとき、その走行面より突出することはないものと考えられる。また、左右のトラツクユニツト20の走行面からコントロールレバー37、ケーブル38又は杆52が突出するときは、重量物積載車の積卸しの障害となるから、このようなことは当然設計上考慮されねばならぬ事項であり、その点引用例においても配慮されていることは、その構成より充分認められるところである。従つて、引用例の構成のものでは、ブルドーザは積載し得てもロードローラーは積載し得ず、本件考案は引用例のものに比し、作用効果上格別なものを備えているものとする原告の主張は理由がない。
以上の次第で、本件考案と引用例との構成の一致点及び相違点を認定し、右相違点は単純な設計変更の域にとどまり、結局本件考案は引用例に示すものと同一の考案に帰するとした審決の認定には誤りはないというべきである。よつて、審決の違法を理由としてその取消を求める原告の請求を棄却する。
〔編註〕 本件における考案の要旨および審決理由の要旨は左のとおりである。
本件考案の要旨
重量積載車の後端縁に沿いて、その後端に回転軸を枢着し、該回転軸の両側に歩み板を取付け、且つ該回転軸の略中央下部に腕部を突設し、この腕部とデツキの下部に設けた油圧シリンダーのピストンロツドの先端とを、ピストンロツドが伸びたとき、歩み板が上昇し、ピストンロツドが引いたとき歩み板が降下するように、遊着した重量物積載車における自動歩み板昇降装置。
審決理由の要旨
本件考案の要旨は、前項のとおりである。
これに対し、アメリカ合衆国特許第二九〇〇〇九四号明細書(昭和三四年一二月一八日特許庁資料館受入、以下「引用例」という。)には、重量積載車の後端縁に沿つて、その後端に回転軸を枢着し、該回転軸の両側に歩み板を取付け、且つ該回転軸の略中央部において斜上方に向けて腕部を突設し、この腕部とデツキの下部に設けた油圧シリンダのピストンロツドの先端とを、ピストンロツドが引かれたとき歩み板が上昇し、ピストンロツドが伸びたとき歩み板が降下するように、遊着した重量物積載車における自動歩み板昇降装置が記載されている。
そこで、本件考案と前記引用例のものとを対比すると、重量積載車の後端縁に沿つて、その後端に回転軸を枢着し、該回転軸の両側に歩み板を取付け、且つ該回転軸の略中央部に腕部を突設し、この腕部とデツキの下部に設けた油圧シリンダのピストンロツドの先端とを遊着した重量物積載車における自動歩み板昇降装置である点において両者は一致しており、ただ、本件考案は、回転軸に突設した腕部を回転軸に対し下方に向け、この腕部と油圧シリンダのピストンロツドとを連結し、油圧シリンダのピストンロツドが伸びたとき歩み板が上昇し、反対にピストンロツドが引かれたとき歩み板が降下するようにしたのに対し、引用例のものは、回転軸に対し斜上方に向け腕部を突設し、油圧シリンダのピストンロツドが伸びたとき歩み板が降下し、反対にピストンロツドが引かれたとき歩み板が上昇するようにした点において両者は相違するものと認められる。ところが、一般に回転軸に突設した腕部と油圧シリンダのピストンロツドの先端とを連結して、ピストンロツドの伸縮によりこの回転軸をどちらかに回動させる場合に、ピストンロツドの伸縮方向と回転軸の回動方向は、回転軸に突設した腕部の方向が上向きかあるいは下向きか、さらにピストンロツドを回転軸の前方あるいは後方に設置するかによつて決定されることであつて、これらは任意に選択できる設計上の問題にすぎないものであり、本件考案の場合にピストンロツドの伸縮と回転軸の回動方向とは作用効果上格別の差異はないから、結局前記相違点は単純な設計変更の域にとどまるものとするのが相当である。
従つて、本件考案は前記引用例に示すものと同一の考案に帰すものであり、実用新案法第三条第一項第三号に該当し、実用新案登録をすることができないものである。